レボチロキシンについて

レボチロキシンLevothyroxine)またはL-チロキシンは甲状腺ホルモンのひとつであり、T4との略称を持ちます。医薬品としては甲状腺機能低下症の治療に用いられることや、甲状腺癌の予防に用いられることがあります。不斉炭素を一つ持つ化合物であり、自然に存在するサイロキシンと同じくL-型です。商品名は「チラーヂン」。対掌体であるD-チロキシンは高コレステロール血症治療への応用が検討されたこともありますが、心毒性のために開発中止となりました。日本ではサンド株式会社から「レボチロキシンナトリウム錠」として発売されています。

効能・効果

日本で承認されている効能・効果は、粘液水腫、クレチン病、甲状腺機能低下症(原発性および下垂体性)、甲状腺腫(以上錠剤)および乳幼児甲状腺機能低下症(散剤)です。

レボチロキシンは生涯にわたり甲状腺ホルモンの投与が必要な甲状腺機能低下症の患者に用いられます。甲状腺腫で甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低下していると考えられる場合にも投与されることがあります。結節性甲状腺障害や甲状腺癌でTSHの分泌が抑制されている場合にも用いられます。

用法・用量

レボチロキシンナトリウムとして、通常成人25400µg11回経口投与します。一般に、投与開始量には25100µg、維持量には100400µgを投与することが多いです。なお、容量は年齢または症状により適宜増減するものとします。

甲状腺機能低下症及び粘液水腫の患者には少量から投与を開始し、観察を十分に行い漸次増量して維持量とすることが望ましいとされています。

作用機序

レボチロキシンは化学合成したチロキシン(T4)そのものである。そのままあるいはL-トリヨードサイロニン(T3)に代謝されて効力を発揮します。T4およびT3は細胞核の甲状腺受容体蛋白質に結合してDNAの転写ならびに蛋白質の合成を制御し、代謝に影響を与えます。

慎重投与

・狭心症、陳旧性心筋梗塞、動脈硬化症、高血圧症等の重篤な心・血管系の障害のある患者基礎代謝の亢進による心負荷により、病態が悪化するおそれがあるので、投与する場合には少量から開始し、通常より長期間をかけて増量し維持量は最小必要量としてください)。

・副腎皮質機能不全、脳下垂体機能不全のある患者

副腎クリーゼを誘発し、ショック等を起こすことがあるので、副腎皮質機能不全の改善(副腎皮質ホルモンの補充)を十分にはかってから投与する必要があります。

禁忌

急性期の心筋梗塞患者では、基礎代謝が増加する事で心負荷が増大するので禁忌とされています。製剤成分に過敏症を有する患者またはあらゆる甲状腺中毒症(病因の如何を問わない)の患者にも投与することはできません。糖質コルチコイドの代謝消失が増加して副腎クリーゼをきたすおそれがあるため、未治療の副腎機能不全患者にも用いてはなりません。錠剤は嚥下困難な患者にも使用できません。

副作用

重大な副作用として挙げられるものは、狭心症、肝機能障害、黄疸、副腎クリーゼ、晩期循環不全(低出生体重児、早産児)などが挙げられます。

TSHが長期間抑制されていると、しばしば心臓系の副作用を起こし、また骨密度を減少させることがあります。低TSH血症は骨粗鬆症の原因となります。

レボチロキシンへのアレルギー反応として、呼吸困難、息切れ、顔と舌の腫張が起こることがあります。

レボチロキシンの用量が多すぎると、甲状腺機能亢進症の症状を呈します動悸、腹痛、嘔気、不安、混乱、興奮、不眠、体重減少、食欲亢進などが引き起こされます。

また、大過量投与の症状として、発熱、低血糖症、心不全、昏睡、無症候性急性副腎不全があります。大過量投与は命を脅か危険性があります。治療は対症療法です。症状は交感神経系の興奮によるものであるので、交感神経β受容体遮断薬を用いることが多いです。過量投与の症状は、服用後6時間〜11日程度持続します。