口糖尿病治療薬メトホルミン

メトホルミンについて

メトホルミンMetformin)は、ビグアナイド系薬剤に分類される経口糖尿病治療薬のひとつです。日本での商品名は「メトグルコ」「メルビン」(大日本住友製薬)、「グリコラン錠」(日本新薬)が先発品として発売されていまする。後発医薬品としては「メデット」(トーアエイヨー)や「ネルビス」(三和化学)などがあります。

ビグアナイド薬のメトホルミンは、肝臓でのブドウ糖産生を抑えることにより血糖値を改善します。世界的にも日本でも、まず初めに飲み始める第1選択薬とされています。第1選択薬と評価される理由としては、心血管病を減らすエビデンスがあること、禁忌(悪影響を及ぼすので使ってはいけないケース)にさえ使用しなければ安全性が高い薬であること、単独では低血糖をきたさないこと、体重を増やさないこと、安価なこと、がんの抑制効果も期待されることなどの理由が挙げられます。

メトホルミンが使えない場合の第2選択薬についてはまだ統一の見解はありませんが、DPP-4阻害薬が使用される場合が多いです。

薬理

メトホルミンが肝臓での糖新生を抑制することなどによって糖尿病に効能をもつことは開発当初から知られていたが、その薬理については複数の作用が考えられています。メトホルミンを含むビグアナイド系薬の直接の標的としてはミトコンドリアの呼吸鎖複合体Iが知られ、その活性阻害により、結果的に細胞内のAMP/ATP比を増加させて細胞内のエネルギーバランスを変化させます。このため主に肝細胞において、細胞内のエネルギーバランスのセンサーであるAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を介した細胞内シグナル伝達系を刺激することにより、糖代謝を改善することが示唆されています。またAMPKによりリン酸化されて活性が調節される基質分子には、脂質の産生に関わる様々な因子も含まれます(アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC1,2)、HMG-CoAレダクターゼ、転写調節因子SREBP-1など)。このため、メトホルミンAMPKによる基質分子のリン酸化亢進を介し、糖新生だけでなく中性脂肪やコレステロールの合成も抑制し、脂肪肝や血中の脂質レベルの改善にも効果を示すものと考えられています。さらに、AMPKによる脂質産生抑制は結果的にジアシルグリセロール産生を抑制するため、プロテインキナーゼCPKCε)によるインスリン受容体に対する負の制御を解除し、インスリン抵抗性を改善することも示唆されています。

用法・用量

通常、成人にはメトホルミン塩酸塩として1日量500mgより開始し、123回食後に分割経口投与します。維持量は効果を観察しながら決定しますが、1日最高投与量は750mgとされています。

適応症

2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)

メトグルコのみが高用量(一日2250mgまで)での処方が可能であり、グリコランおよび後発品では一日750mgまでに制限されている。

副作用

重大な副作用とされているものは、乳酸アシドーシス、低血糖(15%未満)、肝機能障害、黄疸、横紋筋融解症です。

・乳酸アシドーシス(ブホルミンなどの他のビグアナイド系薬剤に比べ少ないため、肝障害・腎障害がなければ頻度は少ない。日本のMORE studyでは一例もみられませんでした)。心不全、肝障害、慢性腎臓病、高齢者、アルコール多飲者では、乳酸アシドーシスが起こりやすくなっています。アルコールはNAD+を消費し、枯渇させます。メトホルミンも呼吸鎖複合体Iを阻害し、NAD+の供給を阻害する。結果として相加的にNAD+が枯渇し、クエン酸回路が反応できなくなります。

・皮膚瘙痒感

・下痢、嘔吐、嘔気、腹痛

3年以上の長期投与や1000mg/日以上の投与の場合、ビタミンB12欠乏症

がん治療

メトホルミンが、がん局所に存在する制御性T細胞の増殖と機能を抑制することが近年研究によって発見されました。制御性T細胞の抑制効果はがんに対する免疫作用を増強することにつながり、がんの免疫治療に貢献できる可能性が明らかになりました。