オピオイド鎮痛剤トラマドール

トラマドールについて

トラマドールTramadol)は、オピオイド系の鎮痛剤のひとつです。1996年のWHO方式がん疼痛治療法の3段階中の2段階目で用いられる弱オピオイドです。トラマドールには主な2つの機序があり、μオピオイド受容体の部分的なアゴニスト(作動薬)としての作用と、セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用とを併せ持ちます。

モルヒネの10分の1の鎮痛効力があるとされ、比較的に安全で乱用性は低いとみなされていますが、それでも乱用や身体依存が引き起こされることがあります。通常の治療用量でまれに起こる副作用としては、オピオイド鎮痛薬と共通する抑うつ、昏睡、頻脈、心血管崩壊、発作、呼吸停止といったものが挙げられます。致命的な中毒は過剰投与や他の薬剤やアルコールとの併用に関連します。現在は経口薬・坐薬・静注・皮下注・筋注・徐放剤・合剤など、幅広い方法で使用できます。

処方例

状況、重症度、体重・年齢などによって処方は変化します。一般に高齢者・肝機能が低下した人では作用が増強され、作用時間は延長します。トラマドールとその主な代謝産物の代謝時間は数倍に延長することがあります。その場合は、1回投与量を減らし、投与間隔を空けるようにしてください。

・軽度から中等度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛

食後の経口。もしくは医師管理の下での筋注を行います(トラマドールの筋肉内注射は、効果の発現が不安定なため用いられることは少ないです)。経口投与では1日の服用量が4錠を超えることはほとんどありません。

・非オピオイド鎮痛剤で治療困難な疾患における鎮痛

食後の経口。非がん性慢性疼痛・抜歯後の疼痛が適応として承認されています。これも1日の服用量が4錠を超えることはほとんどありません。

作用機序

オピオイド受容体に直接作用するほか、セロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、下行性疼痛抑制系を賦活し、神経因性疼痛への鎮痛効果を発揮する特異なオピオイドです。μ受容体に対しては中等度の親和性を持ちますが、κδ受容体にはほとんど親和性を持ちません。μ受容体に対する親和性は、コデインの1/10、モルヒネの1/6000となっています。

薬物動態学

日本ではトラマドールはカプセル、注射剤、アセトアミノフェンとの配合剤で使用されます。健康成人男性にトラマドールを単回経口投与したとき、投与量にかかわらず、トラマドール(±-TRAMは速やかに吸収され、(±-TRAMの血漿中濃度はそれぞれ投与後約12時間および約1時間に最高血中濃度に達した後、約55.5時間および約3時間の半減期で低下します。トラマドールの薬物動態は用量比例性を示します。また(±-TRAMは、速やかに活性代謝物O-脱メチルトラマドール(±-M1に代謝され、(±-M1の血漿中濃度は、投与後約2時間に最高血中濃度に達した後、約6.5時間の半減期で低下します。血漿中(±-TRAMおよび(±-M1の各鏡像異性体の(+)体および(-)体の血漿中濃度推移および薬物動態パラメータはおよそ類似します。

副作用

通常の治療用量でまれに起こる副作用は、オピオイド鎮痛薬に共通する乱用、身体依存、抑うつ、昏睡、頻脈、心血管崩壊、発作、特に呼吸機能が低下した者では呼吸停止といったものがあります。致命的な中毒は過剰投与や他の薬剤やアルコールとの併用に関連します。

他の副作用には、便秘・悪心・眠気・頭痛・倦怠感など、オピオイド系の副作用との違いはほとんどありません。しかし、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込み阻害の作用もあるため、副作用がさらに強化される可能性を伴っています。

特に頻繁に遭遇するものは以下の通りです。

・胃腸障害(悪心、嘔吐、便秘、消化不良)

・心臓障害(動悸、頻脈、高血圧、低血圧)

・神経系障害(傾眠、浮動性めまい、頭痛、多幸感)

・腎および尿路障害(排尿困難、アルブミン尿)

・皮膚および皮下組織障害(そう痒、発疹、多汗)

禁忌

・アルコール、睡眠剤、鎮痛剤、オピオイド鎮痛剤または向精神薬による急性中毒患者。

・モノアミン酸化酵素阻害薬を投与中の患者、または投与中止後14日以内の患者。

・治療により充分な管理がされていないてんかん患者。

・消化性潰瘍のある患者。

・重篤な血液の異常、肝障害、腎障害、心機能不全のある患者。

・トラマドールに対し過敏症の既往歴のある患者。